【研究職日記】初めての特許に衝撃を受ける
企業へ入ると、特許を書く機会が増えます。むしろ、学術論文よりも特許のインセンティブの方が高いように思います。
学生時代、学術論文執筆を行ってきた自分にとって、弊JTCの研究職の方々の特許執筆に、かなり衝撃的を受けました。
もくじ
なぜ、衝撃を受けたのか?
弊社の特許執筆に衝撃を受けた理由として、
1年間の部署ごとの特許提出ノルマが40件以上
私の部署は、社員が約50人ほど在籍しています。
それにもかかわらず、特許提出のノルマが40件以上となっており、「1人当たり、約一件?、うっ、うそだろ...」と驚きました。
学術論文は1年で1本書けるか、書けないかというぐらい難しいことです。そのため、部署全員が特許を書けると会社が考えていることに衝撃を受けました。
しかし、みなさん、なんとか特許を作成し、出願まで漕ぎつけるのです。これにはいくつか理由があるのです。それについて、次に説明していきます。
なぜ、そんな大量の特許を書けるのか?
特許の場合、学術論文とは違い、何か課題があって、それを解決するアイデアさえ出せれば、特許にすることができます。学術論文では実験やシミュレーションなどを行い、アイデアを実際に検証するフェーズが必要でしたが、特許はその部分があまりいらず、アイデアさえあれば、特許として、特許庁へ投稿することができます。
そのため、比較的、短い期間で特許を執筆することが可能です。
なぜ、社員のほとんどが特許を書けるのか?その他の理由として、調査をさぼっていることや弊社の特許のハードルの低さがあげられます。
本来は、時間のかかる工程をさぼっているため、時間が削減できているのではないかと考えています。
他の仕事で時間が取れず、先行研究・アイデアの調査きちんと調べない
論文執筆において、先行研究の調査は大変、時間を要する作業だと思います。
私は、初めての特許執筆で先行研究・アイデアを調査する際、学術論文のときと同様に、特許、論文を合わせて40本近く調査していました。アカデミアではこれでも少ないくらいだと思います。
他の仕事もあったため、残業し、調査していました。
ある日、先輩社員にみなさん、特許のための先行アイデア調査はどう行っているんですか?と聞いたところ、
社内の特許データベースを1時間ぐらい調べて終わりだよ
という自分にとっては衝撃的な答えが返ってきました。これでは、その分野におけるアイデアの位置づけはできませんし、既存の研究・アイデアと被ってしまうでしょう。
企業では、複数雑務や仕事をこなさなければならず、純粋に研究活動のみをできないため、先行研究の調査があまくなる傾向にあるのかなと思います。
アイデアは非専門家が審査し、ノルマさえクリアできればよい
学術論文を出す際には、近い分野の専門家がレフェリーとして、査読を行ってくれます。この査読を突破するために論文を洗練したり、レフェリー対応などにかなり多くの工数を要すると思います。
特許は特許庁へ提出を行います。このとき、弊社では、いきなり特許庁へ提出するのではなく、知財部門や事業部の方に見せ、OKをもらえれば提出できるという制度になっています。
ちなみに私はなんで、この分野に詳しくもない非専門家がアイデアの良し悪しを決めるのか?と疑問に思いました。しかし、出願料などは会社負担のため、文句は言えませんね...
特許を出すことは企業では昇進やボーナスのためのノルマになっていることが多いです。ここで、弊社では特許を出願できれば、ノルマが達成できます。
多くの社員が、この非専門家の壁さえ突破しノルマを達成できればよい、中身の正しさや先行研究とかぶることはどうでもよいという考えていました。
どうせ、中身が間違っていたり、先行研究と被ってたら、特許は拒否されるからどうでもいい
こんな考えを聞いて、衝撃を受けました。
特許と論文は違うとは言え、数を打てば当たるでしょ?のような考えは受け入れがたいです。
テキトーに論文書いて、プレプリントサーバーにあげるだけなら誰でもできます。
私はこうならないように気を付けたい。社内にも、質を重視し、真面目に研究し、論文、特許を執筆している方々もいらっしゃるのでその方々を見習っていきたいと思います。
次回は、私の特許作成記録でも書こうと思います。