【研究職日記】特許書いてみた
以前、筆者は特許という概念を初めて知り、学術論文との違いに衝撃を受けました。
社会人二年目になり、ついに筆者も特許を執筆することになりました。ワクワク(するわけないでしょ!)
筆者の会社では、普通、一年目で特許執筆を経験するのですが、筆者はタイミングが悪く、執筆が後回しになってしまい、二年目に執筆することになりました。
本記事では、特許執筆体験を書いていきます。本記事では、特許の具体的な内容については説明せず、JTCではどのように執筆が進んでいくかを説明します。
JTC研究職での特許執筆の一つのサンプルとなれば幸いです。
もくじ
ステップ1:アイデアを練る
まず、アイデアを練っていきます。私が得意な物理学と現在行っているソフトウェア開発を組み合わせ、アイデアを作っていきました。
最初は、素人発想で考えていき、実際に世の中の役に立ちそうか、筋は良さそうかなどを私の上司と相談しながら、テーマづくりを行いました。
ステップ2:公知例調査
公知例や先行研究を調べ、
- 自分のアイデアが先にやられていないか、もし似た内容であれば、差分はどこか?
- 他の研究、アイデアに対して、自分のアイデアの立ち位置はどこか?
を説明できるようにまとめていきました。特許10本、論文40本、計50本近く、調べました。
ここで、気を付けたいのは、特許分野で先行研究を調べるのは、とても大変だということです。というのも、学術論文と違い、
- 一つの特許に多くの文献が引用されているわけではないため、全体像を知るのが難しい。日本の特許だと、せいぜい、1~3本です。
- 特許を管理するツールなどがなく、文献をまとめるのが大変でした。
- 特許を調べるツールも良いのがあまりない、あっても有料。筆者はgoogle patentsと社内ツールで頑張っていました。google scholarの方が100倍使いやすいです…
という事情があり、とてもめんどくさかったです。
ステップ3:アイデアを具体化する
実際にどうやって現実に実装するかを考えていきました。
具体化とは、何をインプットにして、どういうプロセスで実行されるかを図やチャートフロー図を使ってパワポにまとめていきました。
ステップ4:上司へ説明する
全体像をまとめ、スライドにまとめたら、それを上司の方と議論していきました。
「もっとこうした方がいいんじゃないか」、「君のアイデアはソフトウェアの分野ではこういうことじゃないかな」と多くのフィードバックをいただくことができ、大変勉強になりました。
この期間に、ステップ1~3を繰り返し行い、アイデアを洗練していきました。
ステップ5:部長へ説明する
次に、部長へ説明しに行きます。この部長を突破するのが大変でした。
というのも、部長さんは、コンピュータサイエンス、ソフトウェア開発にかなり詳しく、何度も議論を繰り返しました。
私が想定していた状況などは、実際のソフトウェア開発の現場では起こらない、現状のアイデアだと現場の方は使おうと思わないなど、かなり、実践的なアドバイスが多かったです。
実際の現場を知らない私のアイデアは、feasible (実現可能) 性が欠けていたため、何度もアイデアを練り直していきました。
5月~7月くらいまで、ステップ1~5を何回も繰り返し、結構つらかったです。
ステップ6:知財部門の方に説明する
知財部門の方に、ステップ1から5で練ったアイデアを説明し、特許性があるかなどを審査していだきました。
見事OKが出ました。弊社では、ここでOKがもらえないと、特許執筆を開始できません。
知財部門の方は、コンピュータサイエンスの専門家ではありません。知財部門が見ることのできない、技術の妥当性を検証するためにステップ5で部長直々に私のアイデアを添削してくれました。
ステップ7:特許を執筆する
やっと、特許執筆です。
弊社では、明細書と図面をそれぞれ、WordとPower Pointで作成します。
初めて、特許を見た方は、その独特さに驚くと思います。何だこりゃ…、暗号⁈かと驚きました。
特許は明細書と図面からなります。会社にもよると思いますが、明細書はWord、図面はPowerPointで作成しました。
基本的に、ステップ3、4の段階でアイデアはすでにパワポにまとめていたため、特許を書くこと自体はそんなに辛くありませんでした。それよりも、いろんな人からのレビューがきつかった…
特許は大まかには以下のような構造になっています。特許の具体的な構造などは別の記事で詳しく紹介したいなと思います。
- 背景技術
- 先行技術文献
- 発明の概要
- 発明者が解決しようとしている課題
- 課題を解決するための手段
- 発明の効果
- 発明の効果
- 図面の簡単な説明
- 発明を実施するための形態
- 特許請求の範囲
- 請求項1~N
- 要約
どこから書くかは人それぞれだと思いますが、私は図面から先に作成を始めました。私は以下の順で進めました。
①図面アーキテクチャ全体とチャートフロー図
②発明を実施するための形態
③発明の概要
④請求項
⑤その他
まず、代表図面という、アーキテクチャ全体とチャートフロー図を作成していきました。図面から描く理由は、先に文章から書いてしまうと、後で図面中の番号を変えるのが面倒だからです。また、最初にイメージ図で全体像が仕上がっていっるとそれを後は文章に直すだけで良いのがメリットかもしれないです。
図面は、各機能がどのようにインタラクションするかを書いていきます。フロー図はアルゴリズムが複雑になると図面がごちゃごちゃしてしまうため、全体像を1枚、各ステップごとにフローチャート図を作成しました。
次に、発明を実施するための形態というセクションを書いていきました。このセクションは図面やアイデアを実施するためのフローを説明するためのセクションです。また、どうアイデアが実施されるのかその具体例を説明します。
これで書き終わるとあと一息です。あとは、概要、請求項を書きあげました。
請求項は自身の特許を守るために重要なセクションです。もし、この請求項に書かれた内容を無断で実施した場合、特許の侵害となります。そのため、ここは様々な方にアドバイスをいただき、書き上げることができました。
ステップ9:ついに提出
やっと、特許を提出です。自分お疲れ。
作成した明細書と図面を会社が契約している特許事務所の方に提出し、添削後、特許庁へ出願されるようです。
特許書くのってめっちゃめんどくさい!
だけど、全力でやれば、とてもいい経験になる!(はず)
感想
- アメリカの特許を観ればよかった
- 特許ってめんどくさい、伝言ゲーム
- ソフトウェアの分野で特許を書くの結構きつい
- 何かの作業を自動化しました!だと特許にならない
- OSS、特許、論文、ありとあらゆるところに公知例が散らばりすぎていて集めるのが大変
次は、特許と論文の違いや、特許の構造、特許をどう読めばいいかを自分なりにまとめて記事にしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。