【研究職日記】メーカー研究職の研究の分類について

みなさんは、研究というと、

  • 先行研究調査のために論文を読む
  • (実験系の方なら)実験室にこもって実験を行う
  • 論文を書いて、学会発表する

などを思い浮かべるのではないでしょうか?

また、メーカー研究職の仕事について

  • メーカーの研究って何やるの?
  • 大学みたく、学会発表して、論文書いてればいいの?

などの疑問を思う方がいると思います。本記事では、そんな方々の疑問に答えるために、企業の研究職が行う研究の種類について解説していきます。

研究にも分類がある

企業の研究所が行う研究は、大学の研究とは違い、興味があるから、面白いからやるのではなく、会社、または、社会にとって必要だからやるのです。今まで、みなさんは、指導教員の先生や共同研究者が取ってきた予算に助けれらていたから、大学で、ある程度自分の興味ベースで研究ができていたと思います。しかし、企業では雇用関係が存在し、会社から、または事業部の方々から研究所に投資をしていただくことで、研究ができています。そのため、大学のように自由には研究することはできません。

企業の研究所が行う研究は、主に利益が生み出せるかを基準に3つのタイプに分類されます。それらについて、一つずつ解説していきます。

タイプ1 : 本社事業部から依頼される研究

タイプ1は、既存事業に対して行われるプロジェクトです。主に事業部(たまに外部の会社のお客様)から、依頼を受けて取り組むプロジェクトです。基本的には、世の中にある技術 (機械学習やOSS)・ビジネスの最新動向を追い、既存事業に適用可能かを調査することが多いです。具体的にはこんなことを依頼されると思います。

  • 既存事業に対して、近年流行している生成AIを使いたいから、事業に適用できるかどうか調べてきて
  • 既存事業のソフトウェア開発を効率的に行いたいんだけど、自動化するOSSツールとかない?

また、調査したことだけでなく、新しいアイデアが生み、それを事業に適用することも提案したりします。このとき、学会発表のネタができることもあり、その場合は、事業部の許可などを取ることで、外部へ発表することも可能です。

メリット

  • 自分の行ったことが実際に会社の利益につながっていることを実感できる。
  • 事業部の方々とつながりをつくることができる。
  • 会社がどんな事業をどんな風に行っているかを見ることができる。
  • ビジネスの知識を得ることができる。

デメリット

  • 自分の好きなようには研究が進めることができない。
  • 研究者というより、社内コンサルぽくなってしまう。
  • 期限が短いスパンで決められている。
  • 研究者キャリアで論文や学会発表の機会が少ない。もし、論文や学会発表をやりたい場合は、自分で上司に相談したり、自ら動く必要がある。
  • 事業部に言われたままに仕事をしていると、事業部の便利な開発マシーンと化する。

タイプ2 : 本社事業部のために先行的に行う研究

タイプ2の研究はタイプ1と似た部分がありますが、違いはタイプ1よりも実現性が少し低いところです。まだ、事業としては立ち上がっていないが、成功すれば大当たりが狙える事業の提案、生産系だと、会社に適用できる見込みがないが、もし成功すれば事業開発の生産性を大きく上げられるなどがあります。

私はタイプ1とタイプ2の両方を経験しましたが、やっている身としては違いがあまりよくわかりませんでした。そのため、メリット・デメリットはタイプ1と同じです。どちらかというとマネジメントをする方が予算、マネジメント面でタイプ1、タイプ2の違いを感じていると思います。

タイプ3 : 今後、利益になるかわからない基礎研究

タイプ3は、研究しても将来利益になるかどうかわからない基礎研究などです。このタイプ3が一番、大学の研究に近いと思います。例えば、私が行っていた量子コンピュータに関する先物の基礎研究はタイプ3に含まれると思います。ある程度制約はありますが、事業部と会話することはほとんどなく、研究だけがやりたい方はタイプ3の研究があっていると思います。ただ、下のデメリットにもある通り、タイプ3の研究をし続けるデメリットもあります。

メリット

  • アカデミアに近い研究をできる可能性が高い
  • 事業部とのコミュニケーションや忖度を行う必要がなくなる
  • 期限はないか、長期スパンのため、じっくり研究に取り組めることができる

デメリット

  • ビジネス・事業経験や開発経験を積むことができないため、転職活動などで不利になるケースが高い
  • ハイリスクな研究なため、プレッシャーが大きい
  • 実現できず、プロジェクトが失敗に終わることも少なくない
  • タイプ1、2を行っている研究者や事業部から、会社の利益に貢献していないと陰口を言われることもある

まとめ・参考文献

今回は、私の所属する会社を参考に企業の研究を3つのタイプに分類しましたが、細かい部分は会社によって異なると思います。

どのタイプの研究に携わることになっても、上司や事業部に言われたことだけを行う便利なマシンにならないよう、日々、自分で考えて行動したり、足りない知識は自分で勉強していく必要があると思います。

最初タイプ1、2のプロジェクトに携わり、ビジネスや開発に関する知識を会得し、視野を広げてから、タイプ3の研究へ社内転職したり、他の企業へ転職したりするのが良いのかなと考えています。

今回執筆にあたって、丸山 宏さんの「新 企業の研究者を目指す皆さんへ」という本を参考にしました。丸山さんのIBM、キャノン、PFNでの研究経験をもとに企業研究者は何をすればよいか、エッセンスが書かれた本です。今回、私が説明したことに近い内容がこの本の160ページに書かれているのでぜひ読んでみてください。

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