メーカー研究職になってから、1年が経ちました
私は2023年の3月に大学院(物理学専攻)を卒業し、23卒としてメーカーの研究所の研究職として就職しました。就職してから、約1年が経過したので、この期間に体験したこと、感じたことをブログにしていこうと思います。これから、大手メーカー就職を狙う就活生や研究職を目指しているみなさんのお役に立てたら良いなと思っております。弊社はいわゆる、JTC(伝統的な日本の大企業 、Japanese Traditional Company)と呼ばれる企業です。
この記事は前回の記事の後半編です。2023年9月から2024年3月までを記録していきます。
2023年4月から2023年8月までの記録はこちらの記事をご覧ください。
以下、コンテンツです:
もくじ
携わっている分野
私は、現在、社内のITシステム開発生産性の向上、効率化やOSS (オープンソースソフトウェア)活動などに携わっています。
9月 事業部と一緒に仕事していくことになる
研究所所属の私も、ついに、事業部の方と一緒に仕事をしていくことになります。
上期の仕事が終わってホッとする
9月末で、上期 (4月から9月の期間のこと) にやっていた仕事が終了となります。
このとき、研究所は調査した内容や、書いたプログラム、出したアイデアをまとめて、事業部へ渡さなければいけません。
そのため、まとめ作業がなかなか大変でした。これさえ提出してしまえば、おれは楽になれる。そう思っていました。
と思ったら、きついプロジェクトに参加させられる
2023年のことです
9月18日は祝日で9月22日は秋分の日の振り替え休日でした。そのため、19、20、21と有休をとれば、9月16日から24日までの秋休みを確保できる予定でした。
しかし、上期の終わりかけ、9月中盤ぐらいに、上期では終わらなかった事業部とのプロジェクトにいきなり投入されてしまいました。
事業部へ9月25日 (月曜日)までに、ビルドパイプラインを作り、その説明資料を作ることになったのです。しかも、自分は提出物も完成させなければなりません。さよなら、僕の秋休み...
使ったことがないCICDツールを勉強し、パイプラインの作成までを、3日 (19日、20日、21日)で何とか完成させ、翌週の25日(月曜日)午前中に説明書を完成させ、午後の事業部への発表に臨みました。
事業部から酷評を受ける
パイプラインを完成させ、事業部へ発表したところ、大ダメ出しをくらいます。
- 作ったはいいけど、それをどうやって使うかの説明がない
- なんでそんな機能にしたの?
- それを使って、私達(事業部の方々のこと)は何をすればいいの?
と結構高圧的に言われました...
かなり落ち込みました...
そうです。作るだけではだめなのです。それを使って何をするのか、なぜ、そのような仕組みにするのか、それを使って事業部の方が何をすればいいのかを全て説明しなければいけなかったのです。
確かに、自分の詰めが甘かったと思います。だけどこれだけは言わせてほしい...
そっちがこういうパイプラインを作れって言ったんでしょうが!
3日でつくらされたんだから当たり前だろうが!
結局、このプロジェクトは最後 (2024年の3月)まで延長されてしまいました...
10月 国際学会への参加が決まるがオーバーワークとなる
事業部との会議連打が始まる
9月終わりに参加する羽目になったプロジェクトに関する打ち合わせが連打で行われることになります。
嫌なこともたくさんありましたが、
- 事業部が何を望んでいるのかを聞き出して、アイデアを練っていくこと
- なぜこれをやるのか、必要なのかを考えること
- 作ったものをどいう風に活用していくかを提案すること
ができたのはとてもいい経験になりました。
毎回、会議で事業部の方々に詰められるのは緊張しました。しかし、1ヵ月後には、ただ一方的に詰められる状態からしっかり議論して、解決策を自分で考えて提案できるように状態になったので成長したかなと思います。
また、この経験は研究でも活かすことができました。
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OSSのソースコードリーディングを学ぶ
私は、OSS (オープンソースソフトウェア)のツールの比較なども業務で行っています。上期はブラックボックス的な調査しかできませんでした。ここで、ブラックボックス的というのは、何かサンプルデータを用意し、それをツールに入力して、そのアウトプットを解析することで、ツールの特性を調べる手法のことです。
ブラックボックス的調査では、ツールの特性を完全に知ることはできません。ご存知のようにOSSツールは、github上でソースコードが公開されています。そこで、完全にツールの構造やアルゴリズムを調べるために、公開されているソースコードを直接読んで解析することになりました。
最初はかなり大変でしたが、プログラムはこう書かれており、こういうアルゴリズムで動いているから、このツールはこう活用していくべきだ!と言うことができるため、達成感がありました。
国際カンファレンスへの参加が決まる
OSSの国際カンファレンスが日本で行われることになり、それに共著者として参加することになりました。そのため、少しモチベーションが上がりました。と同時に英語やらないとやばいなとなり、ひたすらYoutubeで昨年のカンファレンスの講演のビデオを見まくっていました。
自分で研究を始めてみる
元々、バックグラウンドとして持っていた物理学をソフトウェアの研究に繋げられないかと思い、自分で研究を始めていました。終業後や土日にひたすら論文を読んだり、計算をしていました。
11月 ひたすらデモを作りこむ
11月はかなり忙しい月でした。登録していない残業も含めれば、残業時間は100時間を超えていたと思います。その理由は、仕事を複数抱えながら、国際会議の発表準備と自分の研究を両立させるためです。
休日も勉強し、デモンストレーションを完成させる
国際会議での発表では、CICDパイプラインのデモンストレーションを披露する予定でした。
CICDパイプラインの作成には、Kubernetesという複数のコンテナを操作する基盤を用いるため、Kubernetesについて知識を深める必要がありました。
そのため、休日も勉強し、エラーに苦しみながらデモンストレーションをなんとか完成させました。恐ろしいことに、デモンストレーションは発表前日の夜完成しました。
毎日、発表までにデモンストレーションが完成するのか不安で眠れませんでした
IT研修が始まる
この時期から、新人はIT研修が始まります。これがなかなか、大量にあり大変でした。しかも、業務は休むわけにはいきませんから、両立させるために、残業で補いました。
しかし、講師は会社の研究者だったので、講義の質は良く、とても勉強になりました。
内容はさまざまでした:
- セキュリティ
- Webアプリケーション
- マイクロサービスアーキテクチャ
- ネットワーク
- Kubernetesの基礎
- 分散処理
- ビジネスモデル
12月 国際会議発表とポスター発表
ついに国際会議発表、発表前日にデモが完成する
前述したとおり、デモンストレーションは前日に完成するという、なかなかスリリングな状況でした。
しかも、英語での発表だったため、発表準備はとても大変でした。
しかし、終わったときの達成感は凄まじいものでした。詳しい詳細については以下の記事をご覧ください
趣味でやっていた研究を京都で発表した
自分で趣味で行っていた研究を京都で開かれた研究会で発表してきました。
久しぶりにアカデミアの雰囲気を感じることができ、とても楽しかったです。
1月 事業部向け資料を作らされる
この一年調査した内容をまとめ、社内公開用の資料を作成することになりました。
- 社内でしか公開されない
- 研究活動ができない
- 既存の情報をまとめているだけ
そのため、学会で上がっていた研究モチベーションは下がってしまいました。
初めてのお正月休み
社会人になって、初めてのお正月休みです。実家へ帰省し、家族に海鮮料理をごちそうしたり、親孝行してきました。
大体10日間ぐらい休みがあり、ここは大企業のいいところですね。
正月休みが明ければ、憂鬱な資料作成が始まります。そのため、お正月休みはひたすら、自分の好きな勉強、研究を行っていました。
資料をひたすら作る、パワポ職人化する
正月休みが終わり、資料をひたすら作成していました。
憂鬱でした。
2月 資料の直し、レビューが続く
資料作成は全くやる気がでませんでした。これやる意味があるか?と自問自答を繰り返いながらもなんとか耐えていきました。
自分がやっていた研究と全く同じ先行研究が見つかってしまう
自分のモチベーションに追い打ちをかけるがの如く、自分が趣味で行っていた研究と全く同じ先行研究が見つかってしまいます。
私は、このネタで特許を書こうとしていたので、そのネタをつぶされてしまい、とてもショックをうけました。
このときは、途方に暮れてしまいました。
気持ちがつらかったので、会社を1日ずる休みしました。
しかし、そのずる休み中、先行研究を超えるアイデアを思いつくことができました。
やはり、アイデアは仕事中のデスクでは生まれないということを改めて実感しました。
大企業のサーベイのテキトーさにあきれてしまう
私は、自分の研究の先行研究を調べる際、少なくとも50本は論文を調査します。
企業では論文ではなく、特許を書くことの方が多い傾向にあります。特許はどちらかというとアイデア勝負であり、引用される文献も1件だけしかない場合も少なくありません。
そのせいか、先行研究調査を1時間ぐらいで調べて終わりという社員が何人もいたのです。また、自社の特許を見てみると、すでに論文にあるものと内容が類似しているものが多くあったのです。
文献を1桁しか調べていないのだから、すでにあるアイデアと被って当たり前です。
このとき、何本も文献を調査していた自分がまるでバカのように思え、呆れてしまいました。
資料の修正、レビューをひたすら繰り返す
資料の修正を行い、研究所と事業部の幹部クラスの方々にレビューをもらっては、修正する。チーム内でもレビューし合い、修正するという地獄の日々が始まりました。
どうせ、ネットに落ちている情報をまとめているだけなので、こんなものChatGPTに聞けばいいのに...
資料作成中、チームの人とぶつかる
パワポのオブジェクトをこのグリットに収めろ、リード文がわかりづらい、構成がわかりにくい、年上の同期に指摘され、少しめんどくさくなってきました。
コマンドを一つ打てばわかるようなことをスライドを必死に作って説明しなければならない。
なんて無駄なんだろう、そう思いながらもなんとか資料作りをしていました。
3月 期末は締め切り地獄で辛い、苦しい、きつい
仕事の締め切りに追われる
年度末はとても忙しいです。それは、上期終わりと同様に、成果物という、事業部への提供物を献上しなければいけないからです。
まとめ論文のようなものも書かなければいけない
企業の研究所では、自分がやったことを社内用にまとめて、論文を書かなくてはいけませんでした。
私は、12月に行った国際発表について書くことにしました。
資料作成や事業部の方々のためのパイプライン構築とは別に、この資料を作成する必要があり、大変でした。
しかし、これは、自分がやっていて楽しかったことなので、文章を書くのは苦ではありませんでした。
ようやく提出
遂に事業部向けの資料作りが終わり、長い闘いが終わりました...
4月からは
今年度、1年間行ったテーマが続くため、来年度も携わります。来年度も、辛いことはたくさんありそうですが、頑張っていきます。
来年度は、自分の中でこれだけは誰よりも詳しいと言えることを身に着けられるように頑張ります。